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房総半島沖のスロースリップ:群発地震について

更新日:4月22日

房総半島沖のスロースリップに関連する報道 (4/15, 4/20) 房総沖スロースリップは国土地理院によれば、現在スロースリップはほぼ停止したようです(4/15)。首都圏直下地震の想定震源域には地震活動静穏化および活発化のいずれの異常も発現していないと判断(首都圏の地下天気図®より)このスロースリップですでにモーメントマグニチュードで6.6ないしそれ以上の地震に相当するエネルギーが解放されているとの事です。ただ、過去の房総半島沖の地震活動を勘案しますと、特に半年ほどは房総半島沖での比較的規模の大きな地震のには十分注意しなくてはいけない状況です。(4/15)

※(DuMA CSOがTV取材を受けました)テレ朝News(4/20)今後の大規模地震は/房総沖(1:10~)

https://news.yahoo.co.jp/articles/41d9c3a873d2fd9845637e2d001226ef91c3b300 房総半島沖のスロースリップに関連する報道(3/29)

3月29日配信のAERAdot.にDuMA/CSOのコメントを中心とした記事が掲載されました。

 この記事は現在千葉県沖で発生しているスロースリップに関連して、見逃されているかもしれないリスクを指摘したものです。詳しくは記事をお読み頂ければと思います。 房総半島沖ではタイムスケールの違う2種類の活動が発生している 2024年2月27日以降、房総半島沖合でまとまった地震活動が開始しました。

 過去のこの地域の地震活動を調査してみると、2024年は、① 繰り返されるスロースリップ・イベントの

中期的なインターバル(間隔)と②M6.5前後の地震発生の長期的なインターバル(間隔)とが重なる周期の年になる可能性があります。(下図①と②の2つの周期)   ①は周期5~6年で繰り返されるスロースリップイベント。

  ②の現象は、再来周期37~38年程度の長いスケールで繰り返される地震活動。 房総半島沖ではタイムスケールの違う2種類①②の地震活動が発生しています。(TVで解説) ※(DuMA CSOがTV取材を受けました)テレ朝News(4/20)今後の大規模地震は/房総沖(1:10~)

 

● 2月28日~3月2日の一連の地震


この地震活動はスロースリップと 呼ばれる現象と関係しています。

2月28,29 3月1日の房総半島(いすみ市近郊)南端の地震活動(気象庁ウエブより)

3月1日になって震源域が陸域に移動したように見える。(下図)


3月2日になると、その活動は内陸部にも飛び火し、2日午前1時29分には、いすみ市付近を震央とするマグニチュード 5.0 の地震が発生し、最大震度4を観測しました。(下図)

国土地理院はスロースリップがどこで、どの程度の規模で発生しているかについて、3月1日に発表を行ないました。  2月29日と3月1日の一連の地震は、下図です。

(国土地理院発表による今回のスロースリップの推定すべり分布 : 2014/02/04~2024/02/28)


 

繰り返すスロースリップ(中期的な周期性① )


スロースリップという現象は、1995年に発生した阪神淡路大震災をきっかけに全国に整備された高感度微小地震観測網(Hi-net)や GPS 連続観測システム(GEONET)の稼働により、数多く発見されるようになりました。そして、巨大地震発生の鍵であろうと今では考えられています。 房総沖では、北米プレート・フィリピン海プレート・太平洋プレートが複雑に重なり合っており、それぞれのプレートが独自に動き、境界がずれる事により地震が発生します。この時、境界がゆっくりずれると、いわば体に感じない地震が発生します。これがスロースリップなのです。

房総沖では、この現象が数年間隔で発生している事がわかっています。これまでの観測で、房総沖のスロースリップ・イベントは平均 6年間隔で発生しており、最新のイベントは2018年6月に発生していました。


房総沖のスローイベントは、これまで、1996年5月、2002年10月、2007年 8月、2011 年10月、 2014 年 1月、2018年 6 月の6回が観測されていました。それぞれが 2 年から 6 年あまりの間隔で起き てており、今回の 2024 年2月の活動となりました。ちなみに前回のイベントから5年8ヶ月(68ヶ月)ぶりの発生とな りました。以下にその時系列は下図。


2011年10月のイベントと、2014年1月のイベント間隔だけ、特に27ヶ月と短いのは、東日本大震災の発生により、房総半島周辺の応力場(歪の分布)が変化したためであろうと推測されています。


スロースリップは1995年に発生した阪神淡路大震災をきっかけとして、それまでの水準測量や三角測量を高感度地震観測網(Hi-net)や国土地理院が人工衛星からの測位(宇宙測位)に切り替えるために展開したGNSS連続観測システム(GEONET) により、数多く発見された現象。過去にも発生していた可能性が高いが実際に観測されたのは2000年以降です。


✓ スロースリップは、スローイベントあるいはゆっくり地震とも言われる事がありますが、基本的には同じ現象を表しています。


スロースリップは巨大地震発生の引き金になるとも考えられている現象で、大学や国土地理院、気象庁などで積極的な研究が行われています。


房総沖では、1996年以降、繰り返しスロースリップが確認されており、これまでに何回もスロースリップという活動が観測されていた。ある意味、非常に特殊な場所です。その間隔は2年~6年となっています。


 

もう一つの周期性(37年~38年という周期の地震活動の存在?!)(長期的な周期性② )

房総半島沖合では、非常に特徴的な地震が一定の間隔で繰り返されてきました。

それは、1912年、1950年、1987年に発生したマグニチュード6.5前後の地震で、特に1987年に発生した地震は「千葉県東方沖地震」と命名されており、 死者 2人、負傷者144人、住宅全壊16棟、半壊102棟、一部破損 6万3692 棟、山地崩壊 102箇所といった被害が発生しました。

✓ 房総沖ではこの数年間隔の地震活動のほかに、30年から40年間隔でマグニチュード6.5クラスの地震が発生している事がわかっています。


実際、1912年、1950年、1987年には被害地震が発生しており、最後の地震からすでに37年が経過しています。

特に1987年の地震は千葉県東方沖地震と命名されました。

 

● 房総半島沖には 2つの周期的タイムスケールの違う2種類の活動が存在?


房総半島沖の地震活動には、スロースリップに代表される周期5~6年の活動と、それを上回る周期 30年~40年(37,38年)の活動の2つが存在している可能性があります。

その関係を次の下記の図に示します。



1950年や1987年の段階では、GPS 地殻変動観測はまだ行われておらず、スロースリップとの関係は不明ですが、理論的な推察として、当時からスロースリップが発生していたと考えるほうが、日本列島の地震活動を考える意味で自然かと思われます。

仮説として、房総半島沖合では、スロースリップが6~8回発生すると、マグニチュード6.5前後の被害を生 じうる規模の地震が発生するのかもしれません。すでに1987年から37年が経過しており、これは看過できな い状況と考えます。  ✓ 2つの周期の活動を模式的に表した図(上図)。

 ✓ 上図の上のパネルがスロースリップが関係すると考えられている活動。

 ✓ 上図の下のパネルがより長期間の房総半島沖での被害地震発生の様子。

 ✓ 2024年は1897年の地震(千葉県東方沖地震, M6.7)から, すでに37年が経過している。


 

今後しばらくは房総半島沖でマグニチュード6.5前後の地震が発生する可能性が極めて高いと推察されます。


ちなみにこの規模の地震であれば、若干の海面変動が発生する事はありますが、津波については全く心配する必要はありません。

 

スロースリップとは何か? (ゆっくり地震を理解する)


スロースリップは、時には「ゆっくりすべり」「ゆっくり地震」、あるいは「スローイベント」「サイレン ト地震」と表現されます。

基本的にはプレート境界が緩慢な速度で滑る現象です。ゆっくりと滑るため、大きなエネルギーを解放しても、その揺れは体に感じないということになります。


スロースリップは1955年の阪神・淡路大震災を契機として、髙感度微小地震観測網( H i - n e t ) が全国展開されて、21世紀になって発見された現象です。


ただ、それ以前にも「サイレント・アースクエイク」 というこの分野のパイオニアとなる本が1993年に東大出版会から刊行されていました。

そこでは、このようないわゆる “ 体に感じる地震波を発生しない地震 ” というものの存在が指摘されていました。


かつてアインシュタインが理論的にブラックホールの存在を予期し、 日食の時に、本来見えないはずの恒星の光が曲がって見えるはずであると予言しました。

そして実際に皆既日食の時、光がアインシュタインの理論通りに曲がっていた事実が示されたのです。


スロースリップ の発見は、まさにこのような観測と理論の進歩により、いまでは観測事実となりました。


このスロースリップが東日本大震災発生の約2カ月前から起きていたことから、巨大地震の発生と関連があるのではないかと考えられているのです。


スロースリップが発生している場所そのものは、歪が解放されているのですが、スロースリップと隣接する地域では、逆に歪 がより蓄積されているのです。


スロースリップは歪を隣接する場所(スロースリップは比較的深いところで発生するので、固着している浅いところ) に移す働きがあるのです。


また、比較的規模の大きな地震が起こった後にスロースリップの範囲が徐々に広がり、最終的に大地震が発生する場合があることもミュレーションでわかってきました。




これが、現在、気象庁が南海トラフ巨大地震に関する「臨時情報」を出す一つの根拠となっています。


具体的には「南海トラフ地震の想定震源域のプレート境界面で、通常とは異なるスロースリップ(ゆっくりすべり)が発生した可能性が疑われる埸合」です。



スロースリップは通常の地震計ではなかなか観測できないため、阪神・淡路大震災以降、国土地理院により全国展開された人工衛星を用いた地殻変動観測網(GEONET)で検出が行なわれています。

まだまだ観測点は少ないですが、海底に地殻変動観測点を設ける試みもここ10年ほどで始まりました。

多くの研究者は、スロースリップが将来発生する南海トラフ巨大地震の発生予測の鍵になると考えています。


 

房総半島沖には 2つの巨大地震の割れ残り? が存在する。


房総半島沖合には、2011年東日本大震災(日本海溝の巨大地震)の南方の割れ残り?が懸念される領域と

1703年江戸・元禄地震・1923年大正・関東大震災(相模トラフの巨大地震)の割れ残り?が懸念される領域が存在します。(下図)



江戸・元禄地震・大正・関東大震災(相模トラフの巨大地震)の割れ残り 現在千葉県沖で発生しているスロースリップに関連して、1923 年の関東大震災の時の『割れ残り』は、見逃されているかもしれないリスクです。

関東大震災を引き起こした相模トラフでは 1703 年にも元禄地震(M7.9〜8.2)が発生しています。元禄

地震の震源域は関東大震災よりも広く、房総半島の東側にも及んでいたことがわかっています。つまり

元禄地震では動いたが、関東大震災では動かなかった割れ残りが、房総半島沖合には存在するので

す。この研究は21世紀になり、産業技術総合研究所を中心に行われたもので、比較的新しい研究成果

です。

下図にお示しする図で、赤で囲まれた部分が1703年の元禄地震で破壊された部分です。それに対し、

1923年の関東大震災で破壊された部分が緑で囲まれた部分です。つまり、房総半島南部沖合には、

『割れ残り』が存在するのです。この割れ残りの部分が破壊しますと、マグニチュード8前後の巨大地震

になり、そのメカニズムから必ず津波が発生します。


元禄地震では、相模灘沿いや房総半島南部で被害が大きく、相模国(神奈川県)の小田原城下では

地震後に大火が発生し、小田原城の天守が焼失するという壊滅的被害が出たとされています。小田原

領内の倒壊家屋約 8,000 戸、死者約 2,300 名、東海道の諸宿場でも家屋が倒壊し、川崎宿から小田

原宿までの被害が顕著であったと報告されています。

この地震で三浦半島突端が 1.7m、房総半島突端が 3.4m 隆起したとの記録が残っています。まさに

元日の能登半島地震のような海岸の隆起が発生していたのです。

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