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地 震 の 基 礎

◆ 地震とは?  なぜ地震が起るのか?

◆ 地震の基礎

  • 地震は地下における急激な断層運動です。地球の表面はいくつかのプレートに分かれており、

それらのプレートは盛んに動いています。

その相対運動の結果として発生する急激な断層運動が地震なのです。

 地震は大きく2グループに分類されます。

その1つはプレート境界でおこる"プレート間地震" (震源の深さ 70km 程度まで) であり、

もう1つはプレート内部で起こる"プレート内地震"です。

プレート内地震はさらに内陸型地震 (深さ30km 程度まで) と、深さ 670km にもおよぶ深発地震に分類されます。

プレート断面
日本の周辺のプレート 3D
日本の地震マップM6以上
  • 日本列島周辺には4つのプレートがあます。

 ① 太平洋・プレート  ② フィリピン海・プレート

   ③ 北米・プレート   ④ ユーラシア・プレート

太平洋・プレート①とフィリピン海・プレート②が日本列島の下に沈み込んでいます。

これら4つのプレートのせめぎあいで起こる地震は、世界の約地震の 10% にもなっています。

  • 地震は日本を覆い隠すくらいどこでも起こっています。

ほとんどの地震は太平洋沖合のプレート境界で発生するプレート間地震で、プレートの沈み込みに伴って震源が深くなっています。

深100 km 以深の深発地震は,沈み込む海洋プレート内で起きているものでその数は少ない。

東北日本から日本海にかけてはプレートの沈み込み角度が浅いためロシア直下にまで震央が分布しますが、小笠原諸島付近では太平洋プレートが急激に沈み込んでいるため地震も急激に深くなっています。

(日大・吉井先生の図より)

M7クラス 地震マップ
M5クラス地震マップ
M3クラス地震マップ

日本周辺でのマグニチュード6以上の地震分布図

 丸印が震源を表し、赤・橙・黄・黄緑・緑・青・

紫の順に深度が深い。  (1926~1998) (JMA)

◆ M7クラス

◆ M5クラス

◆ M3クラス

過去13年間(2000年1月1日〜2012年12月31日)の Mクラスごとの地震の発生場所と震源の深さ

LAIカップリング

Lithosphere-Atmosphere-Ionosphere Coupling: 地殻—大気圏—電離圏結合)

 LAIカップリングは地震あるいは地震前兆が地殻(地面の中、岩石圏、地圏)だけの現象ではなく、広く大気圏や電離圏まで影響を与えている可能性がある事から提唱された。その後、地震時の現象だけでなく、たとえば津波による海面の変動により、大気が押し上げられ、さらにそれが電離層にまで伝わる現象や、隕石が地球に落下する時に、電離層に大きな穴(電子を消滅させる)が開き、さらに大気圏で衝撃波を生じ、それが地面に影響を与え地震計を揺らす現象も広くLAIカップリングと呼ばれる事となった。
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 地球の半径は約6300kmであるが、殆どの地震は深さ100km程度までで発生している。いわば地震は極めて地球の表面近くの現象なのである。さらに電離層も高度80km位から始まり、その間に大気が存在する。いずれも極めて地球の表面近くに位置しており、電離層は地表を写す鏡とも言えるのである。

地球は、半径6400 kmの球体であり、その周りは大気に囲まれている惑星です。地球の表層は、岩石圏と言われる固体になっている(ただし固体面積の7割ぐらいは液体となる海などに覆われている)。その岩石圏の周りは、大気圏で構成されており大気圏も物理的性質の違いで、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏の4つの領域に分けることができます。大気(空気)そのもの重力で、ほとんどの大気は、表層つまり対流圏に存在しておりますが、熱圏の上部ではごく微量の大気が、太陽からのエネルギーの高い真空紫外線によって大気を構成する分子が電離させられ(イオン化)、物質の第4の状態(固体、液体、気体とは異なる物質)であるプラズマが大気の一部に含まれます。

この領域を電離圏と呼び高度80 kmぐらいから、1000 kmあたりまでになります。

前述のように、これらの○○圏と呼んでいる理由は、特徴的な物理的性質が異なるため科学者がそのように分類し、学問もそれぞれの領域ごとに優位な観測手法、理論を使い分け、発展していきました。たとえば、岩石圏におけるよく知られた学問としては地震学や測地学があり、

対流圏での学問ならば、気象学になります。つまり、これらの学問の分離は、あくまで科学者の利便性のためであり

岩石圏で発生している現象が、大気圏に影響を及ぼしたり、また電離圏と大気圏が影響し合っているなど、隣り合うそれぞれの領域での

相互作用も学問進展とともに徐々に発展してきています。

  岩石圏−大気圏−電離圏の3つの領域にまたがる最たる現象は、大地震によって電離圏が大きく変動する現象です。

大地震では、大地が上下に大きくかつ広域に振動しますので(スピーカー表面のような振動が発生しているのと同じです)超低周波の音波(インフラソニック波と呼び、人間の耳の可聴領域ではない)を生じさせることができます。このインフラソニック波は可聴の音波と異なり長距離伝搬することができるため高度300 kmまでの電離圏ならば10分前後で到達します。わずか1 mの大地の振動でも電離圏での大気およびプラズマは構成する分子数が微量であることから、対流圏での振動のエネルギーがキロメートルのスケールの大きな振動に変化し(エネルギーが保存されるためです)、電離圏で容易に検知することができます。 (鴨川仁:静岡大学)

 

 

宏観異常現象

宏観異常現象とは, 人々が視覚や聴覚といった五感によって自然界の異常を観察できる現象のことである. 例えば, 犬が意味もなく悲しく吠えたり, 冬眠中の蛇が地中から出てくるなどする動物の異常, 季節はずれの開花や結実などの植物の異常, 井戸や温泉, 河川の水位や水質の異常, さらに, 発光現象, 異常気象, 鳴動など様々ある. そして, これらの異常現象が地震に先立ち, もしくは 同時に観察されたとして世界各地からの報告が残されている。
 「宏観異常現象」という言葉は中国語から由来した経緯(力武, 1998, 2001)からも推論されるように, 中国では宏観異常現象の研究は盛んな様である(中国安徽省地震局, 1979;中国科学院生物物理研究所地震グループ, 1979;尾池, 1978). 特に世界で初めて地震予知に成功したと伝えられた1975年の海城地震(M=7.3)の先行現象には動物異常行動をはじめとする様々な宏観異常現象が考慮されたと報告された(蒋, 1979)。

◆ 地震の『震度』はどうやって決める?

◆ 地震の『震度』はどうやって決める?

地震の震度はどのように決められてきたのでしょうか。1995年の阪神大震災までは、震度は気象庁の職員が体感で決めていたのです。そのため、全国の気象台や測候所など有人の施設のみの約200地点でしか震度というものは人間の体感でしか決められませんでした。

 このような状況の下、「やはり震度計測を機械化しよう」という事になり、その後機械式震度計(計測震度計)というものが開発されました。震度というのは加速度等の一つのパラメータで決まるものではなく、揺れの継続時間や周期などを勘案して人間が判断していたという事があり、それを数値化する作業がなかなか出来なかったのです。

 現在では計測震度計は全国で4000箇所とも言われており、昔より非常に多くの震度情報が提供される事になりました。そのため、たまたま震源地の近くに震度計が存在すると、小さな地震でも大きな震度が観測されるという事になってきました。昔より大きな震度がニュースで流れる事が多くなったのは、このような計測システムの違いが大きく影響しているのです。

◆ 世界の津波危険度マップ

世界の津波の危険度を アップデートいたしました。(2018年8月)DuMA独自の見解で 津波のリスクを Hi-Risk (赤いエリア)、Mid-Risk(オレンジのエリア)の 2つの危険度を示しています。

 

世界の津波危険地帯マップ

宇宙からの地震予知

減災に即効性がある中期・短期直前地震予知(以下地震予知)のためには 現象(前兆)を検知するのが重要とされています。

先行現象には、地震学・測地学的、地球化学的、地球電磁気的と多種多様報告されていますが、多くは現象そのものが地表ないしは地中で起こっていると想像できることから地上における観測によって見出されているものです。

 

しかし、地上における観測だけでなくともリモートセンシングが行える地球観測衛星ならばこれらの先行現象の一部ならば、人工衛星(高度が2000 km以下の地球周回軌道の低軌道衛星)で見ることができると期待できます。たとえば、測地学的(地震前に変位するなど)の先行現象ならば人工衛星で行われている干渉SAR(合成開口レーダー)捉えることができると期待できるわけです。 とりわけ、低軌道衛星ならば、地球1周を1.5時間前後で周回でき、先行現象の継続時間がこの周回時間を大きく超えるようなものであれば、全球の地震をくまなく精査できるため地上観測に比べて効率よく調べられます。つまり、現象に出くわす確率が圧倒的にあがるというわけです。同じような観点で、地球観測衛星を用いて地表面の温度や大気化学的な現象にも先行現象があるのでは先行現象発見を試みる研究者もおります。

現時点では、いずれの現象でも、学界の誰もが合意できるようなものは見つかっていませんが、全世界には数多くの地球観測衛星がすでに運用されており、過去データも含め膨大かつ多種多様なデータが存在することから、今後もこの視点で研究を進めていく価値はあるでしょう。

 

一方、1980年代、ロシアの科学者を中心に、地上から電離圏の変動を調べると地震前に電離圏が変化するという報告がいくつか出ました。

以後、同様な報告が地上観測のデータを活用して世界各地の研究者から多数出ております。このような報告から、前述の低軌道衛星の利点を生かし、フランスの宇宙機関CNESはこの地震先行電離圏変動現象を調べる電離圏観測低軌道衛星DEMETERを打ち上げ6年間の運用で、統計的に優位な、先行現象を報告しました。この現象は、高度80 km周辺の電子密度の上昇で生じていると見られています。

もしこの現象が、地震の先行現象ならば、なぜ電子密度が地震の前に上昇するかを知りたいわけですが、現時点では、仮説はいくつか提案されているもののこれといった有力な説はまだない状態です。(鴨川 仁 静岡大学)

前震で地中にかかる力を探る

地震が地中にかかる力(応力)の高まりで脆弱な断層が滑ることは良く知られています。
現代科学の共に発展していった地震計の感度や設置数の増加のお陰でかつては観測できていなかったマグニチュードの小さな地震がどんどん検知できるようになってきました。検知できるマグニチュードが小さくなってもグーテンベルグリヒター則には従っています。つまりマグニチュードひとつ小さな地震が検知が出来るようになると検知数は一桁あがってきます。
 

地中の応力の高まりで地震が発生するのであれば、この小さなマグニチュードの地震もごく狭い領域でしょうがその部分では応力が高まっていると想像できましょう。その考えに従えば、大きなマグニチュードの地震は広い領域全般にわたって応力が高まっていて、その領域の範囲内では小さなマグニチュードの地震が時折発生してもよいのではないでしょうか。見方を変えれば大きなマグニチュードの地震の発生前に震源付近で発生する地震を前震であるから、これら時折発生する小さなマグニチュードの地震、つまり前震の発生原因は大きな地震の準備領域を示していると期待が高まります。以上のアイデアに従えば、大きな地震の予測の観点からみると前震を空間的に調べることで将来の大地震の滑り領域が予想できるはずです。前震が本震発生前に分別ができ他の小さな地震とどう違うのかという問題はひとまずおいておき、過去のデータを使って本震の前に発生する前震の発生する広がりを見てみたいと思います。
 

現代では小さなマグニチュードの地震がずいぶん検知できるようになったとすでに述べました。しかし、数え切れないほどの前震をいかなる大きな地震でも検知ができるほどではまだその段階にはありません。そのため、多数の本震事例に対して統計的に分析するのが現代ではまだ適しているでしょう。イタリアの物理学者リピエロ氏はこの解析を行い、余震の発生領域と前震の発生領域が、(あくまで統計的結果の範囲ですが)同じであることを示しました。本震のあとに多数の地震が発生することは大森則という経験則が見つかった明治時代ぐらいでも知られていたことでありますが、余震に比べて圧倒的に検知数が少ない前震に着目して発生領域が同じという結果が得られたことは驚きでありました。また今なお余震の発生する場所を調べて本震の発生領域を推定していることから考えると前震からも本震の発生領域が推定でき、前述の予想通り、小さなマグニチュードの地震の観測で地中の力の分布を知ることができそうです。将来、前震が判別できる手法が見つかれば、大きな地震の発生領域が見積もることができるでしょう。(鴨川 仁 静岡大学)

◆ スロー地震〔サイレント地震)

体に感じない地震(スロー地震、ゆっくり地震等とも呼称される)

 断層がきわめてゆっくり滑ると、我々が地震とは感じないだけでなく、通常の地震計にも記録されません。このような地震をスロー地震とかサイレント地震あるいはゆっくり地震という名で呼ばれています。

 この現象は1980年代後半から90年代初頭にかけて、当時富山大学理学部の川崎一朗教授によって理論的に予測され、発見されたものです。日本の地震学における1990年代の最大の成果と言ってもいいと思います(最初に学界でこの現象の存在可能性が指摘されたのは、1990年の地震学会であったようです)。DuMA/CSOは当時、金沢大学理学部に所属しており、富山大学とは緊密に連携して研究を実施していました。まさにこの現象の発見にリアルタイムで立ち会う事が出来たのです。

 その後、最初の論文が1991年に出版される事になりました(川崎一朗ほか、「日本周辺のサイレントアースクエーク検出の試み』,地震, 44, 75-83, 1991. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin1948/44/2/44_2_75/_pdf)」。

 当時は現在のようなGPS観測網も存在せず、古典的な伸縮計(トンネルの中に長さ30m程度から100m程度の石英管を設置し、その長さの変化を精密に測定する計測装置)のデータを解析していました。

 皆様は太平洋プレートが東北地方の日本列島の下に、年間8cm程度の速度で沈み込んでいる事をお聞きになった事があるかと思います。このプレート運動による歪の蓄積が東日本大震災に代表される東北沖での巨大地震を発生させる原因です。

 1年に8cmという事は、10年で80cm、100年で8mの沈み込みとなります。この歪が開放されるのが通常の地震です。ところが東北沖では、すべての地震でどれくらい歪が開放されているかを合算してみると、通常の地震だけでは、この歪を開放することが不可能である事が1970年代から明らかとなっていました。つまり沈み込み量に見合うだけの地震が発生していないのです。地震によって開放される歪は、東北沖の日本海溝沿いで30から40%程度、南海トラフ沿いでは70%程度と言われています。

 つまり残りの歪はプレート境界がゆっくりとすべるために人体や通常の地震計には感じることなく開放されていると考えたのです。1993年には本現象に関する最初の本が出版されました(川崎一朗ほか、サイレント・アースクェイク 地球内部からのメッセージ、東京大学出版会)。

◆ 地 震 波 の ス ピ ー ド は ど れ く ら い 速 い か ? ! !

地震波の「P波」,「S波」は、 地表付近ではP波速度が5km/sec前後,S波速度は3km/sec前後、地殻ではP波は7~8km/秒、S波は4km秒で伝わります。これらの地震波がどれくらい早いか 比べたものが、図18です。
 地殻のP波を7Km/秒とすると、時速25,000km/時です。これはマッハ21の速さで、東京=新大阪間を79秒で到達する速さです。 光通信の光ファイバー内の信号の速度は光速の2/3倍(光ファイバーの屈折率1.5)で、時速720,000,000Km/時、東京=新大阪間を0.003秒で信号は到達します。 この地震波と光通信の速さの差を利用したものが、緊急地震速報です。
 地球上に住んでいる我々は、1日24時間で自転する地球の上に乗っかって生活しています。そのスピードは時速1,670km/時でマッハ1.5程です。また1年365日で太陽の回りを1周する平均軌道スピードは、更に速く 時速107,229km/時、マッハ90のスピードの超光速メリーゴーランドに乗っていますが、我々は重力のお陰で船酔いもせず、振り落とされもぜず生活出来ています。 /sec前後,S波速度は3km/sec前後、地殻ではP波は7~8km/秒、S波は4km秒で伝わります。これらの地震波がどれくらい早いか 比べたものが、図18です。
地震波s,p波の速さ比較
図18

◆ 地 震 発 光

地震の揺れのときに発生する地震発光は、古代のギリシャ、ローマ、中国の時代から古今東西で報告されています。多くの研究者の調査から、自然現象としての地震発光の存在は間違いないであろうと考える研究者が多数います。その光は全天的に広がるもの、地表面において局所的にみられるものなどさまざまです。世界で初めての地震発光に関する科学的文献は、19世紀前後のヨーロッパでの報告をまとめたGalliによるものでしょう。以後も多くの報告がでましたが、どれも目撃例などの報告であり、存在を裏付ける地球電磁気的観測や光学的観測などはごく僅かな事例をのぞいてありません。そのため研究者誰もが現象の存在を認めるにはまだまだ時間がかかるでしょう。また、地震の前にも先行現象(前兆)として地震発光があるという報告や主張もありますが、地震との相関性・因果性を示すことは難しく、地震時の発光に比べて調査も僅かであるためいまのところよくわからないといってよいかと思います。

言うまでもなく日本では地震が多く発生します。そのため地震発光の研究は近代科学が日本に入ってからしばしばなされています。たとえば、夏目漱石「坊っちゃん」のモデルにもなっている物理学者・寺田寅彦は、武者金吉という人の地震発光に関する調査研究を支援しています。武者は、2000にもわたる多くの目撃例を収集しました。もちろん寺田も発光機構などについて考察をしています。地震学者も含め多くの科学者の存在を知ったのは、1965年から1967年に起こった長野県松代群発地震になります。現地で観測研究した地震学者らは、地震発光を目撃したとのことです。また、現地の歯科医でもあった栗林さんという方は常にカメラを携えて地震発光の写真の撮影を試み、見事発光現象らしきものを捉えています。この写真は多くの文献によって紹介されているので世界的にも知られたものです。

その後、近代都市において初めてといってもいい都市型直下地震となった1995年マグニチュード(M)7.3の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)においては、多くの目撃例が報告され、複数の研究者の調査が文献にまとまっています。この目撃例を支持する科学的計測が報告されていないのが残念ですが、この地震を機会に地震発光に関する調査する気運がさらに高まったといえます。

近年、動画が記録できる携帯電話の普及とともに、全世界的に地震時の発光が一般市民によって録画されるようになってきました。動画投稿サイトの普及も重なり、一度大地震が起こるとこのような地震発光が世界中に瞬く間に報告されるようになってきています。事例として一番初めに起こったのは、2007年8月15日に発生したMw8.0ペルー・ピスコ地震です。この地震は、夜になったばかりのときに発生し、多くの人が街にでていました。また、首都リマと震央が約150 kmしかはなれていなかったため、都市に住む多くの人々が、大きな揺れを感じるだけでなく、揺れの最中に発光現象を目撃し、動画を記録しています。また防犯カメラでも発光現象が捉えられていました。数々の動画がYoutubeに投稿され世界中のメディアを通して地震発光ではないかと話題になりました。現地の地球電磁気の研究者による論文によれこれら自然現象であり、いわゆる地震発光であろうという報告をしています。しかしながら、アップロードされている数々のYoutube上動画を見てもわかるように、発光は、市内の複数箇所で見られ、同種の自然現象とは考えにくい報告は以後の地震でも多く報告されており、変電所などでのアーク放電とみるべきでしょう。しかしながら、このような防犯カメラの普及、誰でも動画がすぐとれるような環境が整ったのは近年であり、今後、どのような調査をしても自然現象としての地震発光と断定できるようになる日は近いかもしれません。(MK記 2020Dec)

地震発光

◆ 地 震 雲

地震の前に発生するのではと一般社会にも広く認知されている「地震雲」。これほどよく市民にも浸透している科学的ともいえる現象は少ないでしょう。同じように一般でもよく知られ地震の前兆として話題にあがるのは動物行動異常でしょうか。いずれも、日常の生活で観察できるような現象であるため、専門家の間では「宏観(こうかん)現象」として分類されているものです。同じジャンルとして分類されていますが、科学的な研究成果は大きく異なり、前者はほぼ学術論文と呼べるものがなくいわゆる疑似科学・似非科学といったような評価がなされています。一方、後者は多くはありませんが科学的論文があります。その科学論文も第3者によって追試ができるようなものであり科学的手順がきちんとふまれたものであるため、科学者における評価は異なります。しかし、前者は市民科学としても絶大な人気があり、インターネット上においても多数地震前兆としての地震雲の報告がなされています。なぜこのような違いがあるのでしょうか。これらの理由を説明するような社会科学的研究はほぼないと思われますが、推察するには人間においても観察しやすい雲を観測対象としているため、身近な科学として対象になりやすいのでしょう。類似したような現象としては、血液型性格判断などがあるかと思われます。補足ながら、血液型性格判断は複数の手法による統計学的調査で存在を否定されています。

いずれにしろ地震雲は客観的・定量的な判断が難しい人の目を通さずとも科学計測が調査できるようなものです。それらが地震前兆を熱心に研究する専門家さえ地震雲の存在の評価すら行わないのは簡単な思考実験でも地震雲の研究に取り掛かろうとする根拠がないからかもしれません。まだ存在を否定するような成果すらないことから、熱心な地震雲の存在を主張する市民科学者からの意見は、科学的に存在しないという成果もなされていないのだから存在しないとはいえないのではという意見はあります。もしこのような主張をするならば、まずは科学計測と統計的な評価を行うべきであり、それも常に他の専門家からの批判に耐えられるものを行っていく必要があります。なにか震央が地球電磁気的または測地学に変化しそれらが雲を作る要因というのであれば、他の科学計測で雲を発生させる要因を突き止めるところまで試みる必要があります。以上のことが地震雲については前兆現象を熱心に研究する専門家からもなされていないという観点からも、実験・調査を開始する前の実験計画・思考実験の段階で地震雲の存在に関する根拠は薄いと考えていると想像されます。なお地震雲は日本と中国でよく話題に上がる先行現象であり地域性のあるものです。(MK記 2020Dec)

ESTA model

ETASモデル(地震活動度解析の"拡大連動型余震モデル")

大きな地震の直後から地震が連鎖して発生しますが、古来このような地震群を余震と呼び、きっかけになった地震を本震と呼びます。一つの地震が他の地震の引き金となるのです。大きな地震は多くの地震の引き金となり、小さい地震でもそれなりの確率で他の地震の引き金になります。

 

極端に、今の地震は過去に起きた全ての地震によって誘発されたと考えることができるとします。もちろん最近の大きな地震ほど大きな引き金となり、昔の小さな地震ほど小さな引き金になると考えます。これは、考えている地域がそれほど大きくない場合を想定していますが、もし地域が大きければ、最近近くで起きた大きな地震ほど大きな引き金と考え、昔に遠くで起きた小さな地震ほど小さな引き金と考えます。そう考えると、地震は普段から数多く起きていますが、それらの発生の仕方は全く無秩序ではなく、法則性があることになります。全ての過去の地震の影響で今の地震が起きたと考えられます。

 

こう考えると、様々な地震活動をうまく説明できることがわかってきました。この説明のために使われる具体的なモデルはETASと呼ばれています。ETASは、いかなる地震も多かれ少なかれ付随する地震活動を持ち、今の地震は過去の地震に付随して発生した地震の一つという考えに基づいたモデルです。ETASは統計数理研究所の尾形良彦先生が提案したもので、地震学では数少ない日本発のモデルの一つです。

 

ETASモデルは、Epidemic-Type Aftershock Sequenceの略で(地震活動度解析の)”拡大連動型余震モデル”とも言えます。

 

ETASを使う利点は、地震活動の各地域の特徴や相場を再現できることで、これを「ものさし」として使い、地震活動の異常変化(相対的な静穏化など相場の活動からの乖離)を検出できることです。一般に、異常がみられてもその後必ずしも大地震が起こるとは限りませんが、その起きる確率が通常より高くなっていることも計算できます。

 

また、過去の地震活動にETASを当てはめ、過去の地震の起きかたも将来の起きかたと同じと考えて、将来の地震活動を予測することにも使えます。ETASは地震本部の余震活動の評価手法に取り入れられているほか、米カリフォルニア州の次世代の短期的予報モデルに採用されおり、地震活動の標準モデルとして国際的に受け入れられています。(KN記 2020Dec

◆ 地震活動度のクラスタリング、デクラスタリング(デクラスター)

2024年1月1日能登半島地震でのETASモデル余震解析:2024年2月5日時点:複数の研究機関で能登半島地震の余震を解析したところ、震央の西側の領域で、明らかに期 待される余震数より、余震発生が減っている事がわかりました。これは、余震活動の相対的静穏化と呼ばれる現象で、かなり大きな余震が発生する前兆的な変動と 考えられます。復旧が軌道に乗りつつあるこの段階で、大きな余震が発生する事は復旧にも大きな影響 を与える可能性が大きく、憂慮される事態です。震央の西側(つまり 能登半島)で明らかに余震発生が理論値よりすくないのです。ちなみに想定される最大余震はマグニチュード6.5前後と推察されます。

右の図が現在能登半島で起きてい る事です。ETAS モデルによる余震発 生数の予測カーブ(赤点線)より、1月 8日ごろから明らかに下方にズレが生 じています(理論的に発生が予想され る余震より有意に数が少ない)。つまり DuMA が予測に用いている地震活動 静穏化が ETAS モデルによる解析でも 発生しているのです(相対的静穏化)。(2024.2.5 NLより)

3.11東日本大震災のような巨大な地震の後の余震活動は本震の発生による応力場の乱れを解消する活動で、本震が引き起こしたと余震活動と解釈できる①。群発地震②も何らかの共通要因によって引き 起こされた関連する地震活動と見なせる。このような①本震-余震活動や②群発地震活動など、ある特定の領域内で続発した一連の地震活動の抽出をクラスタリング(clustering、クラスタ解析)と呼ぶ。

地震活動度の定常性や長期変動などを見るために、余震が単発の地震と併せた地震活動度を、ある程度広い範囲で眺めると、地震はランダムに発生していると見なしたほうが良い場合がある。 ランダムに発生した余震などは、個々の地震が独立して発生し、地震の発生が次の地震の発生に影響しないケースが多いので、これらを徐群することをデクラスタリング(デクラスター)という。
地震活動度の解析(SPI法)の地下天気図®解析、RTM,RTL解析では、解析の前処理として”余震除去”( デクラスター)を行っているため、巨大な地震の後の余震活動のモニターには適していません。

”余震除去”( デクラスター)について、

図は1993年から2007年までのマグニチュード1以上の

東北地方(仙台周辺)の地震活動図です。

2007仙台地方の地震活動度
デクラスタ前@仙台

A-B断面についてのグラフ。横軸は時間軸(単位は年)、縦軸がAーBの軸について投影した図

デクラスタ後

*デクラスタ(余震除去)後の積算地震数(縦軸)。横軸が時間軸(単位は年)。余震を除去(デクラスタ)すると発生率がほぼ一様(直線)となる事がわかる

*地下天気図®解析やRTM,RTL解析ではこのほぼ一様の積算曲線の変化を取り扱って、活発化異常、静穏化異常が顕著に分かるアルゴリズムを使用して解析を行っています。

ETASmodel
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