DuMAの目的の背景
■DuMAの設立の目的(背景)
来るべき大規模・巨大地震に備え、
真に役に立つ地震前兆・予兆研究機関として。
2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は未曽有の津波被害をもたらしました。これ以降、日本では再び地震予知研究に関する見直しの議論が噴出しています。
確かに現在の国の「地震予知研究」には課題が多い事も事実です。
しかし地震前兆・予兆現象を、全く新しい見地からこれらをサイエンスし、劇的に研究が進みつつある事も事実です。
現在地震予知の切り札的な【前兆すべり】ですが、M9クラスの超巨大地震であったにもかかわらず、さらに海底地殻変動観測等がなされていたのにもかかわらず、【前兆すべり】は観測されませんでした。
1995年の阪神・淡路大震災を契機に整備が進んだ基盤的観測網が稼働してからのM8以上の地震ですが、3.11では【前兆すべり】は観測されませんでした。
2003年のM8以上の十勝沖地震でも【前兆すべり】は観測されませんでした。
1995年以後、基盤的観測網が整備されて以降の2つの巨大地震で【前兆すべり】が観測されなかったこの事実は、現在、予知が可能性があるとされている想定東海地震予知の根幹にも関わる観測的事実です。
これに対し、同じく阪神・淡路大震災を契機に開始された科学技術庁(当時)・地震総合フロンティア研究では、電磁気学的な先行現象の基礎研究が行われ、統計的にも有意な先行現象が多くの査読学術誌に発表され、電磁気学的な地震先行現象の実在性については確実な状況となっています。
さらにフランスは2004年に地震先行現象の観測を主目的とした人工衛星(DEMETER)を打ち上げ、4000個以上の地震を対象として先行現象の統計的有意性を示す事に成功しました。
また東北地方太平洋沖地震では、地震発生の約40分前から電離層中の電子密度(GPS-TEC)に変動のあった事が報告されている他、電波伝搬の異常や地磁気の異常が観測されていた事が報告されています。
このような観点から、今必要なのは、真に地震の短期・直前に観測される先行的異常変化(前兆・予兆現象)を検出できる観測網の構築です。
先行現象観測網の一部手法は、世界的に見て、すでにイタリアを中心としたヨーロッパ、インド、ブラジルでも稼働しており、電磁気学的な先行現象観測の機運は世界的な広がりを持ちつつあります。
私たちDuMAが目指す地震予知研究は、決して超能力や占いではなく、通常の科学(サイエンス)の延長です。別の言葉で言うと、地下で始まっている破壊の初期過程の早期検知です。癌で言えば早期発見に相当する研究だと思います。
これには近年大きく発展した「臨界現象の物理学」の応用や、PI(パターンインフォマティクス)を用いての地震活動の定量化アルゴリズム(SPI)が特に有望と考えています。
ここで重要なのは、直前の前兆現象監視にはこれらの手法に加え、各種電磁気学的観測や地下水・地球化学的観測などの非地震学的手法を用いる事です。
3.11 以降、大きな岐路に立っている現行の地震予知研究ですが、いまこそ真の意味で地震直前予知のための地震前兆・予兆現象の研究を実用化にむけてスタートすべきだと思います。そして全国土が地震発生帯である日本列島の地震予知研究は日本ができる最大級の国際貢献の一つです。
今は10 年以上前の「地震総合フロンティア研究」の遺産で国際的競争力の高いサイエンス・レベルを維持出来ていますが、先にも述べたように世界的にも地震前兆・予兆現象の研究が進みつつあり、日本の研究の有意差が将来危惧されます。
私たちDuMAが考えている地震直前予知のための地震前兆・予兆現象の研究概念図が トップページのイラストです。
私たちはこれを地圏―大気圏―電離圏カップリング(LAIC)仮説に基づく地震前兆・予兆現象の研究と呼んでいます。
また表1 には、阪神・淡路大震災以降の主な地震について、ここで述べた手法を適用して(予算とマンパワーの不足のため、すべての解析が終了していませんが)前兆的変動の有無を暫定的にまとめたものです。なお、表の中の「-」は観測点が近傍に存在せず、原理的に変動検出が困難な観測項目です。表1 の各種直前予知手法の解析結果が示すように、適切な我が国の予算措置がなされ、常時モニターできるように観測網が整備できれば、実用化は可能だと思います。
このため、DuMAは東海大学/地震予知研究センターや、地震前兆・予兆現象をサイエンスする研究者の方々と連携を組んいます。
DuMAは地震前兆・予兆現象をサイエンスする研究推進のため,これらの研究を支援をいたします。
表1 : 阪神・淡路大震災以降の主な地震について、SPIやLAIカップリング仮説などの
地震前兆・予兆観測手法の解析結果 (○は先行現象確認:Xは先行現象なし)