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3.11後のまだそこにあるリスク ~ 3.11後の余震活動/アウターライズ地震/正断層型歪み/割れ残り

更新日:3月18日

2011年3月11日の東日本大震災から、2024年3月11日で13年が経過いたします。

東日本大震災(3.11)により被災された皆様、避難生活をされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。

皆さまの安全と被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。 2021年2月13日にマグニチュード7.3の3.11後の余震とみなされる地震が発生しました。


ほとんどの方は「もう地震活動は元に戻ったのでは」と考えがちでしょうが、濃尾地震(1891年推定Mw7.5)の余震は130年以上経過していますが、微小な余震は続いています。

東日本大震災の余震活動は数十年~100年以上続きます。もちろん余震の発生数は確かに低下しています。   ~ 余震活動の「大森・宇津公式」(下図)

地震学的には、まだ4つの大きなリスクが残っていると考えています。 1) 3.11後の余震活動、及び最大余震(マグニチュード7.3クラス)の発生

2) アウターライズにおける津波地震の発生

3) 3.11事前には発生していなった正断層型の地震の発生(福島沖など)

     ~内陸活断層の正断層型地震の発生リスクもあります〜

4) 3.11の北側(青森沖~十勝沖)と南側(房総沖)の割れ残りの地震の発生 ~ 2021年2月13日にマグニチュード7.3は3.11割れ残り地震か?

    追記 ) ✓ 21世紀は9世紀の再来か? 大地揺乱©の世紀に突入        ✓ スーパーサイクル地震の概念図

 

1) 3.11後の余震活動、及び最大余震(マグニチュード7.3クラス)の発生

本震と最大余震との大きさの関係で、一般に本震よりマグニチュードが1小さい地震

(余震)が発生する事が経験的に知られています。ところが東日本大震災(M9.0)の現在

までの最大余震は実は3月11日に本震の約30分後に茨城県沖で発生したマグニチュー

ド7.6 の地震です。これは期待されるマグニチュード8の地震のエネルギーの約1/4 の大き

さであり、最大余震としては小さすぎるのです。そのため、まだ最大余震が発生していな

いと考えられています。

下記は3.11の本震・余震マップ(M>6.5,時系列、2021年2月13日まで)です。






図は故・宇津徳治東大教授が 1970 年に発表した論文から転載したもの。岐阜県周辺の地震活動が、発生後 100 年経過しても、いまだ濃尾地震の余震活動として説明できてしまう事を示した図です。余震の「大森・宇津公式」と呼ばれています。

日本の内陸で起きた地震の中でこれまで最大級と言われている 1891 年の濃尾地震(気象庁マグニチュード 8.0, モーメントマグニチュード 7.5)の余震数の減りかたを表わしています。この図では、縦軸も横軸も対数スケールで図示していますので、双曲線的な変化はグラフ上では直線として表現されます。

1970 年の論文発表時点で濃尾地震からすでに 80 年以上経過していたのですが、グラフが直線的

に変化している事がわかります。つまり岐阜県周辺の地震活動は 80 年以上前に発生した濃尾地震の

余震という事で説明できるのです。


● 地下天気図®解析の前処理として”余震除去”( デクラスター)

3.11東日本大震災のような巨大な地震の後の余震活動は本震の発生による応力場の乱れを解消する活動で、

余震はランダムに発生していると見なしたほうが良い場合が多い。 ランダムに発生した余震などは、個々の地震が独立して発生し、地震の発生が次の地震の発生に影響しないケースで、これらを徐群することをデクラスタリング(デクラスター)という。

地震活動度の解析(SPI法)の地下天気図®解析、RTM,RTL解析では、解析の前処理として”余震除去”( デクラスター)を行っているため、巨大な地震の後の余震活動のモニターには適していません。

図は1993年から2007年までのマグニチュード1以上の東北地方(仙台周辺)の地震活動図です。

A-B断面についてのグラフ。横軸は時間軸(単位は年)、縦軸がAーBの軸について投影した図。  ~ デクラスタ(余震除去)処理前(左下図)と デクラスタ処理後(右下図)

*デクラスタ(余震除去)後の積算地震数(縦軸)。横軸が時間軸(単位は年)。余震を除去(デクラスタ)すると発生率がほぼ一様(直線)となる事がわかります。 ~ デクラスタ(余震除去)処理前(左下図)と デクラスタ処理後(右下図)

*地下天気図®解析やRTM,RTL解析ではこのほぼ一様の積算曲線の変化を取り扱って、活発化異常、静穏化異常が顕著に分かるアルゴリズムを使用して解析を行っています。


地下天気図®解析、RTM,RTL解析では、解析の前処理として”余震除去”( デクラスター)を行っている上、

地下天気図®解析、RTM解析での静穏化異常のしきい値は−8以上を静穏化異常とするため 2021年2月13日余震は若干の静穏化傾向にはありました。(上図)


 

2) アウターライズにおける津波地震の発生


● アウターライズという東北のかなり沖合(日本海溝のさらに東側)で発生する大津波を伴う地震です。実際に1896 年の明治三陸地震とペアとなるアウターライズの津波地震が 1933 年の昭和三陸地震と考えられており、実に30年以上経ってから発生しているのです。(下記Table参照)このアウターライズ地震が怖いのは、海岸から遠く離れているため、東北地方ではそれほど大きな揺れにならないのですが、突然大津波が襲ってくるという事です。当時は津波地震という概念もなく、今のような気象庁による津波速報もなかったために、大きな被害が出てしまいました。

● アウターライズ領域と過去のアウターライズ地震のマップ

*) 上記Tableの 7つの地震の震央は下記地図を参照

● アウターライズ地震の断面図(下図)

太平洋プレート(海側)が、日本海溝のところで、北米プレート(陸側)に沈み込んでいます。かたく、厚いプレートが沈み込むためには、プレートが折れ曲がる必要があります。プレートの折れ曲がりよって(日本)海溝の外側(Outer)の海底に盛り上がった隆起帯(rise)が出来ます。さらにプレートの折れ曲がりによる引っ張りの力で(日本)海溝に沈み込む手前で正断層が発生します。アウターライズ領域の断層を「アウターライズ地震断層」と呼び、アウターライズ地震は、この「アウターライズ地震断層」で発生します。

● アウターライズ地震の断面図と津波発生のメカニズム(下図イメージ図)


1896 年の明治三陸地震とペアとなる、37年後に発生したアウターライズ(OR)の津波地震が 1933 年の昭和三陸地震です。詳細は国立国会図書館(本の万華鏡)のWebなどで下記のような記録を読むことが出来ます。 明治三陸地震 : 地震による直接的な被害はありませんでしたが、津波が北海道から牡鹿半島にいたる海岸に来襲し、死者は21,959名、家屋流出全半壊1万戸以上、船の被害約7千隻という多大な被害をもたらしました。津波の高さは38.2mにも達したところもあり、さらにハワイやカリフォルニアにも波及しました。

昭和三陸地震(OR津波地震) : 地震による被害は少なかったものの、津波が太平洋岸を襲い、三陸沿岸の被害は極めて大きく、死者・行方不明者3,064名、家屋流出・倒潰・浸水などの被害が約1万戸にも及びました。波高は綾里湾で28.7mにも達しました。


昭和三陸地震のような、3.11後の巨大アウターライズ津波地震のリスクはまだ存在する可能性はあります。3.11津波のような津波災害再来の対策は、想定の中にいれるべきで、復興が進んでいる地域でも見直しが必要かも知れません。

廃炉に向けて活動中の東京電力福島第一原子力発電所は、3.11後の巨大アウターライズ津波地震の懸念されるアウターライズ領域から近いことも有り(上記マップ参照)大きな津波の再来の想定が必要になっているかも知れません。

 

3) 3.11事前には発生していなった正断層型の地震の発生(福島沖など)


東日本大震災では沖合の日本列島海溝軸付近(右上の図ではオレンジ色で示した線)で最大50m にも及ぶ海底の東向きの動きがありました。それに対し、東北地方の海岸付近では、5mほどの東向きの動きでした。つまり相対的に日本海溝付近の海底が極めて大きく東向きに動いた(ある意味動きすぎた)のです(overshoot)。このため、従来、東北地方は沈み込む太平洋プレートの影響で東西からの圧縮の力を受けていたのですが、現在は海溝軸から東北地方の海岸の間は 311 以前とは逆に東西方向からの引張りの力を受けるようになったと考えられています(下図参照)。

その証拠に2016年11月には福島県沖で津波警報を伴う地震が発生しましたが、この地震はこれまでこの地域で発生したことがなかった正断層型(東西の引張り力が原因)の地震でした。

311 前には東北地方のすぐ沖合で、このようなメカニズムの地震が発生するとは考えられていなかったのです。このリスクは東北地方の海岸付近で発生するマグニチュード 7.5 から8に達する地震です。東北地方の海岸付近は東西からの引張られている状況で、あたかもシャツが左右から引っ張られている状態で、ボタンが弾けるように東北沖で津波を伴う規模の地震が発生する可能性が高くなっています。一つの可能性は、東北沖での活動が1)の最大余震である可能性も存在します。その場合は3番目のリスク(東北沖での規模の大きな地震活動)=1番目のリスク(最大余震)という事となります。

沖合の日本列島海溝軸付近(右上の図ではオレンジ色で示した線)で最大50m にも及ぶ海底の東向きの動きがありました。それに対し、東北地方の海岸付近では、5mほどの東向きの動きでした。つまり相対的に日本海溝付近の海底が極めて大きく東向きに動いた(ある意味動きすぎた)のです(overshoot)。このため、従来、東北地方は沈み込む太平洋プレートの影響で東西からの圧縮の力を受けていたのですが、現在は海溝軸から東北地方の海岸の間は 311 以前とは逆に東西方向からの引張りの力を受けるようになったと考えられています(下記は正断層ストレスのイメージ図)。



 

4) 3.11の北側(青森沖~十勝沖)と南側(房総沖)の割れ残りの地震


● 懸念される3.11の割れ残りは北側の「青森沖〜襟裳・十勝沖」と南側の「房総沖」にリスクが残ります


マップは、3.11の割れ残りの懸念される

北側の「青森沖〜襟裳・十勝沖」

と南側の「房総沖」の領域を示します。


また 3.11震源域でのプレート境界面での滑り量 (海上保安庁Dataなど)と 3.11当日のM6.5以上の本震、余震の震央を示します。











● 超巨大海溝型地震であった3.11は日本列島全体に影響を及ぼしています。南海トラフへの影響の懸念もありますが、東日本に残るリスク領域は下記のマップです。

✓ 3.11の割れ残りのリスク

✓3.11後の巨大アウターライズ津波地震のリスク ✓正断層型の地震発生リスク

以外にも ✓その他の地震の発生のリスクがあります。


今後のリスクある領域~東日本〜マップ ・酒田・秋田沖の空白域 ・釧路・根室沖の空白域 に関しては DuMA Web 「地震の空白域」 を 参照 また釧路・根室沖の千島海溝の空白域については、3/15/2021のニュースレターで解説。 千島海溝で懸念されるスーパーサイクル地震の図は下記に示す。

2021年3月現在で地下天気図®解析で静穏化異常が深化している南関東エリアと相模トラフ*海溝型地震に関しては 別途ブログ掲載予定です。


貞観地震(3.11相当)から9年後関東南部(相模・武蔵の国)で大地震 ( 相模トラフ*海溝型地震か?)と関東大震災(相模トラフ*海溝型地震)から約100年後がかさなる時代になってきたことから、過去の教訓から学べればとの企画です。(別途ブログ掲載予定)

*) トラフ(trough): 水深6,000m未満の海溝(trench)のこと

 

追記 ) 21世紀は9世紀の再来か? 大地揺乱©の世紀に突入

● 日本列島全体に影響を及ぼした 3.11のような超巨大海溝型地震は過去にもありました。

     DuMA Web 「大地揺乱©の世紀」 を 参照

3.11の前回の東北地方での巨大地震であった869 年の貞観地震(M8.3 以上)が発生した9世紀には、以下のような地震・火山活動が発生した。(日本列島全体に影響を及ぼしたと考えられる)

  • 869 年 貞観地震(M8.3) 東北地方に大津波、超巨大地震

(3.11東日本大震災相当で1100年前の前回の大震災)

  • 878 年 関東南部(相模・武蔵の国)で大地震 ( 相模トラフ*海溝型地震か?)

       (貞観地震から↓9年後) (首都圏直下に相当か?)

  • 886 年 伊豆諸島・新島の噴火

      (それまで2つに分かれていた新島が一つになった)

  • 887 年 仁和の地震(M8~8.5) 仁和の南海・東海地震

        (関東南部の大地震から↓9年後)      (東海・南海地震相当か?)


スーパーサイクル地震の概念図

       

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